歯医者という職業は、当初、歯の痛みをとることを目的に誕生しました。進行して激痛を伴うようになったむし歯を、抜歯することで除痛する。これが、最も原始的な治療法です。現在でも、開発途上国ではむし歯を抜歯して治療します。
次に、歯を削るドリルが開発され、むし歯の部分を削り取り、歯に金属を詰めることが出来るようになりました。同時に、むし歯の部分を削り取る事で、むし歯が治るという誤解が生まれました。むし歯の部分を削っても、歯を取り巻く環境が改善しなければ、同じ歯に何度もむし歯を繰り返します。削る道具がさらに進歩し、簡単に歯が削れるようになりました。むし歯は、できるだけ早期に削り取るべきと考えられ、どんどん歯が削られました。
そして、どんどん歯が無くなりました。
できてしまったむし歯をきちんと修復できる技術は大切です。歯科医は、まずこの技術の習得しなければいけません。その一方で、まだ、むし歯になっていない歯を、むし歯にしないこと。これも、同じくらい大切な技術です。
後者は一般的に「予防」といわれ、「治療」と区別されますが、”むし歯を削って詰めっぱなし” で終わらせず、次のむし歯を防ぐ具体的な方法を伝えなければ、「むし歯の治療」は成立しないと思うのです。むし歯の本当の原因は、むし歯を削っても無くならないのですから。(むし歯のページを参照)
FDI(世界歯科連盟)が2000年に、20世紀の歯科治療の反省をもとに、21世紀におけるむし歯治療のあり方についてMinimal Intervention(MI)という概念を世界に向けて提唱しました。(2002年に更新)
参考文献:Tyas,M.J. ,Anusavice,K.J. ,Frencken,J.E., et al :Minimal intervention dentistry - a review FDI Commission Project 1- 97. Int. Dent. J., 50 (1): 1-12, 2000.
MIの考え方
MIの考え方は、削る歯科から歯を守る歯科への転換を求めたものだと思います。 特に、「2.患者さまへ歯を守る知識を伝えること」が、大切ではないかと考えています。むし歯のみならず、歯周病についても、この考え方は有用であると思います。
「出来るだけ歯を削らない、歯を抜かないで治療する」と言うのは簡単です。患者さま側でも、そう望む方が多勢いらっしゃいます。しかし、病気の進行を抑える方法を知らずに、やみくもに「削らない、抜かない」で患歯を放置すると、むし歯が進行して神経をとる事態になったり、細菌の温床となって周りの顎骨や歯に悪影響を及ぼしたりします。
精査のうえ、適切に診断する必要があります。そして、削るべきは削り、抜くべきは抜き、保存できる歯に対しては、歯を残すための具体的な方法を伝えることも、「治療」ではないでしょうか。
私は、このMIの概念に基づいて、皆さまの歯が残る治療を心がけます。
歯を残す治療を目的とした場合、歯を大切にしたいと思っていない方には、私たちは全く無力です。自分の歯で食事ができる幸せに気づき、正しい知識をもとに、普段から少し気をつけていれば、本来、その幸せは一生続くものである(歯周病のページを参照)ということを、多くの方に知ってもらいたいと願います。
当院を受診の際には、ただ、歯を削られるだけではなく、歯を残すための話を聞いてください。
でも、日本人の成人歯周病罹患率は 80%
具体的なリスクを知らずに、的外れの歯磨きだけをひたすら一生懸命行っても、むし歯や 歯周病は発生します。そして、この歯周病は、歯を失う原因のNo.1です。(歯周病のペー ジを参照)ただ、歯を磨くだけでは、歯は残らないようです。
毎日、歯ブラシをしていてもむし歯/歯周病になる人もいます。全然磨かなくてもむし歯 にならない人もいます。そんな人でもある年齢から急にむし歯が多発したり、むし歯にな らないと思っていたら、進行した歯周病になったりします。
年齢や口腔内の状況、生活習慣の中に潜む、個別のむし歯/歯周病のリスクを知り、歯を残す具体的な方法を知って下さい。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
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午前 | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × |
午後 | ○ | 〇 | ○ | × | ○ | 〇 | × |
午前:9:00~13:00
午後:15:00~18:00(17:15最終受付)
※ただし、祝日がある週の木曜日は診療しております。
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